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なでしこ新聞18号(2007年8月発行)掲載
夏バテとその対策について
小島 彰夫
毎日毎日暑い日が続きますが、いかがおすごしですか?熊本の夏は暑く、六月から九月まで、およそ三ヶ月間にわたります。八月の最高気温月平均32.6℃は全国第3位です。
この暑さの中で、『何となくだるい』・『食欲がない』・『なにもやる気がしない』などといった症状を感じている人はいませんか?これを「夏バテ」と言っていますが、実は、西洋医学では、「夏バテ」という病気はありません。しかし、体内では次のようなことが起こっていると思われます。
「夏バテ」の三大原因
1.体内の水分とミネラルの不足
夏になると気温が上昇すると体温も上がるため、身体は汗をかいて体温を下げようとします。汗は水分と一緒にミネラル分も体外へ排出するため、体に必要な水分やミネラル分が大量に失われてしまい、脱水症状を起こすなど、体調に異常をおこしてしまいます。
2.消化機能の低下、栄養不足
「夏バテ」というと食欲低下が思い浮かぶと思います。暑いと胃の消化機能が低下します。また、冷たい水分をがぶ飲みすることで胃腸を冷やし、ますます胃の機能が低下します。また、多量の水分摂取で胃液が薄まり栄養の吸収が悪くなり、さらに食欲がなくなります。暑くて、食欲がないので、あっさりした物ばかり取りがちですが、食べ物の偏りがあると、ビタミン、ミネラル、たんぱく質が不足し、夏痩せや夏バテの特有の症状が出やすくなります。
3.暑さと冷房による冷えの繰り返し
人間の体は気温の変化に合わせて、体温を一定に保つように自律神経が働いています。暑い屋外と冷房の効いた涼しい室内とを何度も出入りし、急激な温度変化を一日に何度も繰り返していると、自律神経のバランスを崩し、足腰の冷えや、めまい、頭痛、倦怠感などを感じるようになります。
「夏バテ」がどのようにして起こるのか解かれば対策が立てられます。では、その対策について説明します。
1.水分の取り方について
暑いから、喉が渇いたからといって、一度にがぶ飲みするのはやめましょう。水分は、喉の渇きを感じる前に、小分けして回数多く飲むようし、スポーツドリンク類を取り入れる事も良いでしょう。しかし、甘いジュースばかりだと、血糖値が上がり、空腹を感じなくなり、逆に食欲不振を起こしたりします。また、食事の直前の飲み物も胃液を薄めますので注意してください。
では、ビールはどうでしょうか?!
暑い夏はビールの消費が大幅に増えるため、ビール業界は酷暑を望んでいますが、ビールは水分補給には不向きです。と言うのは、ビール中のアルコールには利尿作用があり、短時間で体外に排出されてしまいます。また、ビールはホルモン分泌を抑え、尿量を増やし逆に水分不足になってしまいます。ビールを大ジョッキで何杯も飲めても、水では、1リットル飲むのも大変であることから分かると思います。
2.夏の食事について
暑い日は、素麺やお茶漬けだけですまそうとしていませんか?土用の丑の日には鰻がいいと、昔から言われているように、鰻にはビタミンAや良質の脂が豊富です。鰻に限らす、肉や魚も上手に取り入れてください。また、夏は野菜も豊富です。オクラやニガウリはビタミンもたくさん含まれていて、口当たりや苦味の変化が楽しめます。酸っぱい物や辛い物で胃液の分泌を促し、食欲を増進させる事も良いでしょう。
3.クーラーに頼りすぎない。
クーラーの設定温度を28℃にする事は、省エネの為ばかりではなく、体の為でもあります。冷えすぎる職場では薄物を羽織ったり、ひざ掛けや腹巻き、形態カイロも有効です。また、扇風機、簾や日除けを上手に取り入れる事も大事です。お風呂については、暑いからといって、シャワーだけで済ませないで、ぬるめのお湯にゆっくりと入る事により、乱れた自律神経を元に戻すことができます。
「夏バテ」しない体とは、上手に汗をかける体でもあります。気温の上昇に合わせて
自律神経が働き、体温調節をするために汗をかきます。汗が素早くたくさん出る事は「夏バテ」予防になります。上手に汗をかける体をつくりましょう!軽い運動やストレッチ体操、水中ウォーキングなどはお勧めです。
最後に、漢方について話します。
最初に、西洋医学では「夏バテ」という病気は無いとお話しいたしましたが、漢方では、「夏バテ」に現れる疲労、倦怠感、食欲不振などの症状に合わせて処方する事ができます。よく使われる物として、『補中益気湯』、『十全大補湯』『清暑益気湯』などがあります。当院でも処方することもできます。ご希望があれば、一度ご相談下さい。